闇バイトなぜ増えた?
闇バイトによる強盗などの凶悪事件が後をたちません。逮捕者の多くは10~20代の若者で、なかには14歳の中学生もいました。もう「うちの子だけは大丈夫」とは安心していられないくらい「闇バイト」の魔の手はふつうの子にまで迫って来ています。 子どもを犯罪加害者にしないためにはどうすれば良いのでしょうか?
民間の調査会社の発表では、高校生の5割近くがSNSで仕事を探したことがあるといいます。逮捕された若者の多くは報酬を支払われていませんが、その代償は計り知れません。警察は「怪しい求人には絶対応募してはいけない」と呼びかけています。
闇バイトの変遷
「闇バイト」はSNSの普及に伴って2010年代後半に広まりました。
特殊詐欺の被害金を回収する「受け子」や引き出し役の「出し子」から、他人名義のスマートフォンや銀行口座の売買、違法薬物が入った荷物を転送する「荷受け代行」など多様化しました。
凶悪化したのは、22~23年に相次いだ指示役「ルフィ」らによる強盗事件からです。東京都狛江市の住宅で高齢女性が暴行されて死亡しました。
今回の一連の闇バイト強盗事件でも、強盗殺人や現金引き出し目的の連れ去り事件が起きています。
実際におきた闇バイト強盗
関東で相次ぐ強盗事件で、逮捕された大学生の男は事件前に京都市内の警察署に相談をしていたことがわかりました。
京都市の大学生佐円昌紀容疑者(23)は東京都三鷹市の住宅に押し入り70代の男性加えた疑いで逮捕されました。
警察によりますと、佐円容疑者は事件の2日前、自宅近くの警察署に相談をしていたということです。
ほかにも、横浜市青葉区の強盗殺人事件で逮捕された宝田 真月 容疑者(22)は神奈川県警に対し、闇バイトと知らずに初めて応募したと説明しています。
また別の事件の金子優汰容疑者(28)は、11月3日千葉・四街道市の住宅に押し入り、住人の男性(57)を殴るなどしてけがをさせ、現金1万3000円を奪った疑いが持たれています。
その後の調べで、金子容疑者が「1人で強盗に入るなら報酬を20万円上乗せして、30万円にすると言われた」という供述をしていることが分かりました。
熊本では、SNSで詐欺の現金の引き出し役などを募集したとして、暴力団幹部が「職業安定法違反の疑い」で逮捕されました。SNSで闇バイトを募集したとしてこれまでに熊本市の高校生などが逮捕されていて、警察は暴力団幹部が闇バイトを勧誘するグループの取りまとめ役だったとみて実態を詳しく調べています。
逮捕されたのは福岡県に本部を置く指定暴力団「道仁会」系の幹部で住所不定の西村達哉容疑者(27)です。
警察によりますと、西村容疑者は10月10日ごろから20日にかけて、SNSに「短期間で高収入、やりたい人いたら連絡ください」という投稿をし、詐欺事件でキャッシュカードを受け取る「受け子」や現金を引き出す「出し子」を募集したとして職業安定法違反の疑いが持たれています。
警察は容疑者の認否については、捜査に支障があるため明らかにしていません。
11月1日には熊本市に住む16歳の男子高校生と18歳の姉がSNSで「闇バイト」を募集した疑いで逮捕されていて、警察はほかにも事件に関わった人物がいるとみて捜査を進めていました。
警察は、西村容疑者が「闇バイト」を勧誘するグループの取りまとめ役だったとみて、グループの実態を詳しく調べています。
どうやって闇バイトに応募したの?
佐円容疑者はSNSにあった「ホワイト案件」と書かれたアルバイトに応募し、通信アプリの[テレグラム]で自身の身分証を送付したところ、特殊詐欺への加担を求められ「全部分かってるぞ逃げられないぞ」などのメッセージが送られてきたということです。
警察署では、犯罪に加担しないよう指導しテレグラムを削除させたということです。
京都府警には同様の相談が複数寄せられているということで、相談の際には犯罪に加担しないよう指導し、必要であれば身辺保護を行っているということです。
宝田容疑者は「短期間で稼げるアルバイトをXで探し、『ホワイト案件』の投稿を見つけて応募した」
「個人情報を教え、断れなかった」と語りました。
金子容疑者は闇バイトに応募していて、通信アプリの「シグナル」で「ポンデリング」というアカウントから指示されたと供述しているということです。 警察は、一連の闇バイト強盗との関連を捜査しています。
一連の闇バイト強盗事件は8月以降、6都道県で計23件に達しました。このうち19の事件で逮捕された実行役や現金回収役は約50人にも上り、約8割は10~20歳代の若者でした。
一連の事件では、「報酬を得た」と供述している容疑者はほとんどいません。警視庁幹部は「闇バイトに手を染めれば“使い捨て”にされる。おかしいと気づいたら、脅されたとしても警察に通報を」と訴えています。
闇バイトの求人はどこにあるの?
警察庁によると、各地の警察による捜査の過程で、特殊詐欺グループが大手の求人サイトや求人誌などに広告を出して実行役を募集していたことが確認されました。
求人が掲載されていたのは
「インディード」(アメリカ発現リクルート傘下)や
「エンゲージ」(日本の求人情報サイト)や
「タイミー」(すきま時間を使って稼ごうと謳うスポット型求人サイト)といった求人サイトのほか、
「ジモティー」( 地域情報を扱う掲示板サイト)や
「X」(旧Twitter。文字メインのSNS)
「instagram」(画像や動画メインのSNS)
などで、 通常サイトの運営者側は求人を掲載する会社を審査しますが、架空の会社を名乗ったり、実在の会社を隠れ蓑にするなどで、運営の審査を通過していたとみられています。
闇バイト募集に使われる仕事内容
募集広告では「配送」や「宅配」「ハンドキャリー」などと仕事内容を紹介していて、「免許・資格不要」「日中だけの勤務可能」などと、誰でも応募しやすい条件を記載していたということです。
SNSやマッチングアプリで多く見られたのは「オフィスワーク系」「軽作業系」などと掲載されるケースが多く、業務は「電話をかけるだけ」「運ぶだけ」などと曖昧にし、高額報酬を提示するのが特徴でした。
「X」や「instagram」では、指示役側が合法な仕事を装い、「荷物を運ぶ仕事」「書類運搬」「送迎」などと投稿して集客しており、違法な仕事と警戒されないよう、「ホワイトバイト」「闇バイト×」「リスクはない」と強調する書き込みもありました。
闇バイト募集の文言はどんなもの?
犯罪グループの募集時の募集文言として、
・高額収入
・高額バイト
・安全に稼げます
・1件10万~
・犯罪ではありません
・学生可能
・初心者大歓迎
・国対応
・保証金なし
・営業で地方へ出張する仕事
・リスク無し
・詳しくはDM
・ホワイト案件
・高校生でもいける
・詐欺ではありません
・誰にでもできる簡単な仕事
などとうたっていることもあるということです。
闇バイトに知人から誘われることも…
知人に誘われたパターンでは、「仕事を探していたら先輩・知人などから『闇バイト』を紹介された」「先輩から金銭トラブルをふっかけられ、借金返済のため『受け子』の役目を強要された」などがありました。
SNSで闇バイトを紹介された人も…
SNSでは、「SNS で知り合った人に『金を貸してほしい』旨の相談をしたら『銀行協会の委託の仕事を紹介する』などと言われ、犯行グループを紹介された」というものもありました。
一方、SNSだけで交渉すると、違法行為に巻き込まれる危険があることを知っていた若者は、半数にとどまりました。
こういった募集の実態がある上で、「犯罪グループから応募者の個人情報を要求されたり、犯行から抜け出したいという少年たちに対し、本人や家族、交際相手への危害などを匂わせ脅迫するなどグループから“抜け出させない手口”」が存在しており、これが昨今の粗暴かつ雑な犯行の大きな特徴を生み出しています。
SNSのみのやり取りで、採用担当者に会えない場合や、面接時ではなく応募時に免許証などの提出を求められるケースは特に注意が必要なようです。
闇バイトについて警察は?
警察庁の資料から、闇バイトに加担した少年たちの声として「闇バイトが犯罪実行役の募集であることやその仕組みや個人情報を握られ、自分だけでなく家族も脅迫されることで、犯行グループから抜け出せなくなってしまうことを知っておきたかった」「警察に捕まるリスクや、刑の重さ、罰金額、逮捕されれば少年院に行かなければならないことを知っておきたかった」と紹介してくれました。
続けて、「少年たちは、このような当たり前の情報を知らなったという事実」に驚いたといい「警察としては、闇バイトに関連するSNSの投稿の削除や、広報活動を通じてその危険性を周知してもらう取り組みを行っていますが、身近にいるご家族がその実態を説明してあげることに尽きます」といいます。
家族を闇バイトに加担させないために
家族を闇バイトに加担させない方法として、
「強盗の実行役は必ず捕まる」
「楽に高額が稼げるバイトは存在しない」
「金銭問題の解決について一人で決断しない(周囲に相談させる)」
「特殊詐欺・強盗に関する犯罪組織の手口を詳細に理解させる」
「捕まった後の悲惨な人生を理解させる」
「具体的な言葉で想像力を喚起するように伝える」
などがあります。
闇バイト強盗に入られたらどうする?
自宅に押し入られた時の対処法については
(1)『個人情報』に関する対策
(2)家への『侵入』に対する対策
(3)侵入しにくい『地域』の構築(主に強盗事件を念頭)の3つの観点での対策が重要」といいます。
次に、家への「侵入」に対する対策として
「防犯ステッカーの貼り付け」
「防犯カメラ/センサーライトの設置」
「インターホンでの対応」
「窓ガラスを割れにくくする防犯フィルムの貼り付け」
「補助錠の設置」
「在宅時の施錠」
※マンションの高層階があえて狙われる事例も多い
「置き配を放置しない」
などが有効です。
それでもいわば実行犯を使い捨てする昨今の強盗犯の組織構造から見れば、抑止が働くはずの防犯カメラやセンサーライトが意味をなさない事例も出ています。
過去には、防犯カメラの位置は気にしつつも、絶対に映らないようにという工夫を一切行わない犯行も見られます。そのため、特に、物理的に入れない環境を構築する必要があります。
また、5分の犯行に耐えれば犯人の大多数が諦めるというデータもありますが、現在の強盗犯の構造のうち、
『実行犯は使い捨て』
『実行犯が脅されている場合もある』
という部分から極めて粗暴かつ雑な犯行が行われ、これまでの防犯常識が一部通用しないこともあり、現在の強盗犯の構造が、これまでの防犯認識のギャップを生み出している状況にもあるようです。
犯罪者が嫌がる街づくり
そして、犯罪を起こさせない地域作りについては「近所であいさつをする」「近所と情報共有(不審な下見や訪問の情報など)をする」など普段から他者とのコミュニケーションが活発であることが、その地域では見知らぬ者の犯罪者にとっては居心地の悪い状態となり嫌遠されます。
強盗に遭遇したらどうすれば良い?
最後に強盗に遭遇した際の対策も説明します。
「抵抗しない(可能であれば外に逃げ出すのが最善だが、実際は難しいケースが多い)」
「無理してその場で通報しない(犯人に逆上される可能性が高まる)」
「時間と相手の言動や特徴を記憶する(話し方やなまり、衣類・靴、行動など)」
「強盗が去ったことを確認した後、速やかに110番し、記憶している内容をメモなどに残す」です。
不安に駆られる日々を過ごしている人も多いと思いますが、今一度、防犯意識を高めて、身の回りでの対策を真剣に検討してみてください。
まとめ
闇バイトの犯罪行為に適用される法定刑は、詐欺罪が10年以下の懲役、強盗罪は懲役5年以上、強盗殺人罪は死刑か無期懲役で有期刑はなく、極めて重いものです。
軽い気持ちで、高額報酬に釣られて、応募をすると人生台無しになりますので、絶対に応募しないようにしましょう。
【何の資格も要らない】のに
【高額報酬を支払う仕事】で、
【担当者との連絡】が
【秘匿性の高いアプリ】や【SNS】で完結してしまうといった募集は怪しいので
【実在の会社】なのか
【その担当者は本当に在籍しているのか】を
裏取り確認をしましょう。
もし応募してしまい個人情報を盾に脅されてしまった場合でも、犯罪に加担せずに、すぐ警察に相談しましょう。
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